文字をなぞる
本を読んでいる時、たまに、ああこの文は良いなあと思いむずむずとした気持ちになる。
ほっておけなくて次の文が頭に入らなくて、その気持ちをどうにかしたくて、文字を指です〜っとなぞることがあるなあ、と自覚した。
一度で気持ちが済まなければ二度、なぞる。
自分の中に取り込もうとしているのかなんなのか。あまりよくは分からない。
たまに古本で文にマーカーが引いてある本を見かけることがある。買う気にはならないけど、その気持ちはこの気持ちと同じなのかなと思う。
いつから文字をなぞるようになったのか。
記憶をたどっていくと、昔々好きだった男の子の名前だった。その字面が好きだった。携帯の画面をそっとなぞった時のことを思い出した。愛おしいなあと思うとき、指でなぞるようだった。