グラタン日記

愚かな民です

桜と卒業と記憶

ふとした瞬間にハッとして、いま ひらめきのようなこの瞬間が私の人生に刻まれ未来で思い出すことになるんだなと確信することが時々ある。


中学3年生。
卒業式をとうに終えても続き、このままいつまでも続くのではないかと思えた部活で最後の定期演奏会もついに終わり開かれた卒業生を送る会の教室の中で、ふと窓の外を見た瞬間がそうだった。満開の桜が窓全面に咲きひらひらと風に散るすっきりと晴れた4月の初日。
あと数日で高校の入学式を控えており、よくまあこんなにもギリギリまで部活しているな、本当はもう中学生でもないのにな、という呆れと本当にこれで最後なんだという寂しさでそっと苦笑した。

教室からよく見えるように校舎のすぐそばに植えられた桜たちの迫力はすごかった。今までもこれからも全ての生徒を見守っているんだろうな。窓は全て左側にあったので、左側の顔にだけやたらと黒子が多いのは桜をよく見ていたからかもしれない。


帰り道、はしゃいで散っていく桜の花びらをつかまえる同級生を見て、こんなおふざけもこれきりなのかもしれないと思い私も必死に花びらをつかまえた。やけに感傷的なあそび方だった。

もう入ることはない、いつも使う裏口の門の鮮やかな青色がまぶしかった。


白い光の中に 山なみは萌えて
遥かな空の果てまでも 君は飛び立つ


低空飛行だけど、ここまで来たよ。